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医師に聞く
手洗い・うがい・
マスクのすすめ(2)長坂 行雄 先生インタビュー

長坂 行雄(ながさか ゆきお)先生
プロフィール

洛和会音羽病院呼吸器センター顧問

1972年名古屋市立大学医学部卒業。大阪大学医学部第3内科に入局し、沖縄中部病院、コロラド大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校にも留学。国立療養所近畿中央病院、金沢医科大学呼吸器内科助教授、近畿大学医学部堺病院内科学教授・呼吸器内科部長などを経て2012年より現病院のセンター所長となり、2019年より現職。日本内科学会認定医・指導医、日本感染症学会専門医・認定医・ICD、日本アレルギー学会専門医・指導医。著書に『楽しく学ぶ身体所見―呼吸器診療へのアプローチ』(克誠堂出版)、『聴いて見て考える 肺の聴診』(共著、アトムス)など多数。

毎年流行するインフルエンザやかぜ。私たちが自分の健康を守るために知っておくべきこと、できることについて、呼吸器領域においてたくさんの患者さんを診ていらっしゃる、洛和会音羽病院呼吸器センター顧問の長坂行雄先生にお話をうかがいました。

私たちにとって身近なインフルエンザ・かぜについて

── インフルエンザウイルスとはどのようなウイルスなのでしょうか?

毎年季節的に流行するウイルスです。RNAウイルスというもので、比較的変異が起こりやすく、新しい型に変わるのではやりやすいです。エンベロープというウイルスを取り巻く殻のようなものがあり脂質でてきています。新型コロナウイルスもエンベロープをもっています。脂質ですので石けんによる手洗いで溶かしやすく、不活化しやすいという性質があります。インフルエンザには主にA型とB型があります。A型が12月ごろはやり始め、A型が終わる2月ごろにB型がはやるパターンが多いようです。夏にも小さい流行がある場合もあります。

── かぜとはそもそもなんでしょうか?

かぜはウイルスによって起こる上気道の感染症です(図1)。ほとんどは鼻の症状を中心とした感染症で、そのうち半分くらいはライノウイルスの感染によると言われています。ライノウイルス自体がそんなに重い障害を起こすわけではなく、かぜのウイルスによって身体が過剰に免疫反応を起こして鼻水やくしゃみが出たりするのです。

では、寝冷えでかぜをひくのはなぜでしょうか?温度の違いによってマウスの体内のウイルス量に違いが出たという研究があります1)。つまり、温度・体温によって身体が敏感に反応しているんですね。また、人間の鼻にライノウイルスを入れて、睡眠時間によって発症に違いが出るのかどうかという研究があり2)、5時間以下の睡眠だと4、5倍くらいかぜを発症やすくなるという結果が出ました。かぜというのはウイルスによって発症しますが、身体の要素も大事ということですね。

図1 かぜとは?

── 咳について教えてください。

咳は基本的には気道や身体にたまった余分なものを外に出す、大事な反応です。痰がたまっているのに咳を止めてしまうのはよくないですので、いかに痰を出しやすくするかが大事です。そしてもうひとつ大事なのは、咳が2週間以上続く場合です。たいていのかぜの咳は1、2週間でよくなるはずですが、咳が2週間以上続き、熱などある場合は病院に行ってきちんと検査・治療を受けてください。

痰が出ない咳もあって、アレルギー、ぜんそく、咳ぜんそくなどが考えられます。もし、夜中に咳が出るようでしたら、ぜんそくを疑ってみてもいいかもしれません。それからマイコプラズマ、肺炎クラミジア、百日咳などもありますね。いずれにしても2週間続けば具合の悪い咳の場合もあるので、必ず病院に行ってほしいです。

私たちが家庭でできる感染症対策として何が考えられますか?

── ウイルスには手洗いは有効なのでしょうか?

ウイルスは石けんだけでも不活化されると言われています。ウイルスが手洗いでどのくらい落ちるかという研究3)では、水でざっと流すだけでウイルス量は1/100に減り、石けんで洗うと1/1000〜1/10000に減るという結果が出ています。水洗いだけでもずいぶん落ちますし、石けんを使えばさらに落ちますから、手洗いは非常に大事ですね。アルコール消毒については、とくにエンベロープがあるウイルスはアルコールに弱いので効果があります(図2)。

図2 エンベロープのあるウイルスの不活化

ドアノブ、蛇口の扱いですが、可能ならヒジを使うのがいいと思います。手が顔にいくことはどうしても防げませんが、ヒジは顔にいかないですから。手は汚れやすいですし、粘膜に手を持って行きやすいので気をつけた方がいいということですね。そしてなによりも手洗いを習慣化することが大切ですね。

── 咳が止まらないときに、うがいはよいのでしょうか

喉に炎症があると咳が出やすいですから、うがいをすることはいいと思います。水でもいいですし、アズレンの入ったうがい薬もいいですね。アズレンは胃の粘膜保護剤にも使われており、間違って飲んでも安心です。また、早く治したいからといって、濃い濃度で激しくうがいするのは刺激になり逆効果ですので、適正な濃度で静かにやってください。喉だけでなく口の中の清潔も大切で、うがいによって口の中の細菌も減らせます。

── 咳をしているとき、マスクは使うべきですか?

人にうつさないだけでなく、もらわないためにもマスクが重要という最近の研究があります4)。咳やくしゃみだけでなく、話しているだけでも飛沫は飛ぶという研究もあり5)、それを防ぐためにもマスクは非常に大事です。新型インフルエンザのときもマスクをしていたら感染が減ったという報告もあります6)。1918年のスペインかぜのときに病院でマスクを使ったら死亡者が減ったという報告もあります7)。マスクは人にうつさないというのが主な目的だと思われていましたが、繊維の目の大きさから考えられる以上に予防の効果もあるのではないかということがわかってきています。いくら小さいウイルス飛沫でも、マスクがあれば通りにくくはなりますよね。ウイルス飛沫も蛇行しないと通れないわけですから、障害があればぶつかります。マスクをつけた方が悪いというデータはないわけですから、つけた方がいいということになりますね。

── マスクと熱中症、これからのマスクについてはどうお考えですか?

人と離れているとき、誰もいないときはマスクを外していいと思います。夏につけっぱなしはむしろ熱中症で危ないです。医療従事者用の高性能のN95マスクは息が苦しい8)、蒸れてニキビが悪化しやすい、接触皮膚炎などの問題があり9)、高性能だからいいということでもないですね。マスクに関するアンケート10)によると、不快感が一番問題でした。耳が痛くならない、つけているところが擦れない、毛羽立たない、メガネが曇らないなどが重要ですね。毎日つけるわけですから、つけていて不快感なく気分がいいもの、デザイン性なども考えられてくるでしょう。ある程度通気がよくないと、かえって横の隙間から出てしまうので、目が細かければいいというものでもないでしょう。サージカルマスクくらいの目、性能で、耐久性があり快適ですぐに外さなくてもすむようなマスクであればいいですね。

新型コロナは何年続くかわからないですから、これからマスクはジャケットどころかシャツと同じような感覚でつけていかなければならないものになると思います。

── 最後に家庭で健康に過ごすためのエッセンスなど、メッセージをお願いします。

健康に過ごすには歩くのが大事ですね。新型コロナで家にこもるようになって体力が落ちた人も多いようですが、体力はある程度回復できますので、しっかり動きましょう。暑い夏は熱中症に気をつけながら歩いて、日光浴をしてください。高齢者はすいている時間にホームセンターかスーパーか、デパートに行って歩くようすすめています。温度は快適、床は平ら、何かあったら店の人が助けてくれる。熱中症にもなりませんし、欲しいものが買えますし。

そして規則正しい生活をする、睡眠を十分取る、帰宅したら手を洗う、顔をむやみに触らない、でしょうか。顔を触ってはいけないということではないですが、触るときは手が汚れているということをある程度意識しておいた方がいいです。マスクもきちんと使いましょう。人様に迷惑をかけないということもありますが、自分や家族を守ることにつながりますよね。

── ウイルスについての正しい知識と健康を守る術について教えていただき、今日はどうもありがとうございました。

取材日:2020年6月22日

文献

1)Foxman EF, et al. Temperature-dependent innate defense against the common cold virus limits viral replication at warm temperature in mouse airway cells. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015; 112: 827-32.

2)Prather AA, et al. Behaviorally assessed sleep and susceptibility to the common cold Sleep. 2015; 38: 1353–9.

3)森 功次、 ほか. Norovirusの代替指標としてFeline Calicivirusを用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討. 感染症誌. 2006; 80:496-500.

4)Mitze T, et al. Face masks considerably reduce COVID-19 Cases in Germany:A synthetic control method approach. IZA Discussion Paper No.13319.

5)Anfinrud P, et al. Visualizing speech-generated oral fluid droplets with laser light scattering. N Engl J Med. 2020; 382: 2061-3.

6)Brienen NCJ, et al. The effect of mask use on the spread of influenza during a pandemic. Risk Anal. 2010; 30: 1210–8.

7)Cowling BJ, et al. AIELLO:Face masks to prevent transmission of influenza virus: a systematic review. Epidemiol Infect. 2010; 138: 449–56.

8)Li Y, et al. Effects of wearing N95 and surgical facemasks on heart rate, thermal stress and subjective sensations. Int Arch Occup Environ Health . 2005; 78: 501-9.

9)Balato A, et al. European Task Force on Contact Dermatitis statement on coronavirus disease‐19 (COVID‐19) outbreak and the risk of adverse cutaneous reactions。The Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology. J Eur Acad Dermatol Venereol

. 2020 Apr 30. doi: 10.1111/jdv.16557.

10)MacIntyre CR, et al. Face mask use and control of respiratory virus transmission in households. Emerg Infect Dis. 2009; 15: 233–41.